この章の学習目標
読み終えたら、できること。
- 「目的に必要な特徴を残す」の意味と理由を、具体例で説明できる
- 「条件を変えて比較する」の意味と理由を、具体例で説明できる
- 「結果と前提を一緒に読む」の意味と理由を、具体例で説明できる
章内を一度に読まず、見出しごとに例を説明してから先へ進んでも大丈夫です。
この章の目次
WHY / なぜ学ぶ?
身近な「なぜ?」から。
天気や行列の待ち時間を、そのまま何度も実験するのは大変です。必要な特徴を取り出したモデルを使うと条件を変えて試せます。ただし計算結果が、そのまま未来の現実を保証するわけではありません。
BIG PICTURE
この章の全体像をつかもう。
現実の対象→目的に応じたモデル→計算・シミュレーション→結果と現実の比較、という流れです。値を変える前に、時間変化を扱うか、乱数を含むかなどの前提を整理します。
アプリ教材の単元原図
まず、図で全体像をつかもう。
図の見出しと、下の本文の見出しを対応させて読みましょう。原図には発展事項も含まれます。この章の確認範囲は本文と代表3問です。
アプリ教材の制作原図を加工せず掲載しています。図の文字コードの固定バイト数などは例で、方式により異なります。本文の条件と併せて確認しましょう。本文は2026年10月に整理したWeb用解説です。
THREE KEYS
まず押さえるのは、3つ。
章の細かい用語は、この3つの考え方に結び付けて読み進めましょう。
目的に必要な特徴を残す
現実のすべてを入れると扱いにくくなります。何を省略するかは目的に依存します。
たとえば:レジ待ちなら客の到着や処理時間を扱い、店の壁の色は省略できるかもしれません。
条件を変えて比較する
何が結果へ影響するかを見るには、どの条件を変えたかを明らかにします。
たとえば:窓口の数だけを変え、他の条件をそろえて待ち時間を比べます。
結果と前提を一緒に読む
モデルが合わない条件へ広げると誤った判断になります。
たとえば:客が一定間隔で来る仮定と、実際に集中して来る状況では結果が違います。
THINK WITH A DIAGRAM
図を読みながら、考え方を追う。
| 分類の観点 | 一方 | もう一方 |
|---|---|---|
| 時間の変化 | 静的 | 動的 |
| 不確実性 | 確定 | 確率 |
| 表し方の例 | 図や実物 | 数式やプログラム |
表が収まらない場合は横にスクロールできます。
3-5-1
モデル化
モデル化は目的に必要な特徴を取り出し、現実の対象を簡略に表すことです。図、数式、実物模型などで表せます。時間変化を扱う動的モデルと、ある状態を示す静的モデル、乱数を含む確率モデルと、条件から結果が定まる確定モデルは、異なる分類の観点です。
3-5-2
条件変更の影響
シミュレーションでは、モデルの条件を変えて結果への影響を調べます。複利の金額は元金×(1+利率)の年数乗です。利率を2倍にしても、利息や最終金額が単純に2倍になるわけではありません。1つの条件だけを変えた比較と、複数の条件を同時に変えた比較を区別しましょう。
3-5-3
結果の読み取り
結果を読むときは初期値・単位・期間・モデルの前提を確認します。ロジスティックモデルなら、増加率と個体数の上限(環境収容力)は別のパラメータです。増加率を変えても上限が自動で同じ割合増えるわけではありません。現実との差を検討し、モデルに入れていない要因を考えます。
重要語句を整理しよう。
| 語句 | 意味 | 混同しやすい点 |
|---|---|---|
| モデル化 | 必要な特徴を取り出して対象を簡略に表すこと。 | 目的によって省略するものが変わる。 |
| シミュレーション | モデルを使って現象を模擬すること。 | 現実の再現を保証しない。 |
| パラメータ | モデルの条件を定める値。 | 何を変えたか明示する。 |
| 動的モデル | 時間に沿う状態変化を扱うモデル。 | 静的・動的と確率・確定は別の分類。 |
| 確率モデル | 乱数など不確実な要素を含むモデル。 | 1回の結果だけで判断しない。 |
| 感度分析 | 条件の変化が結果へ与える影響を調べること。 | 影響の大きい仮定を探す。 |
表が収まらない場合は横にスクロールできます。
WORKED EXAMPLE
一緒に解く:手順と理由を確かめよう。
100という量を毎回20%増やすモデルと、毎回20ずつ増やすモデルを2回計算します。
- 割合で増やすと1回目は100×1.2=120です。
- 2回目は120×1.2=144です。
- 一定量なら100+20+20=140です。
- 同じ最初の増加でも、規則が違えば後の結果が変わります。
| 回数 | 毎回20%増 | 毎回20増 |
|---|---|---|
| 0 | 100 | 100 |
| 1 | 120 | 120 |
| 2 | 144 | 140 |
表が収まらない場合は横にスクロールできます。
割合モデルは144、一定量モデルは140です。
ここで間違えやすい。
TRY IT YOURSELF
次は、自分の言葉で。
毎回10ずつ増やすモデルと毎回10%増やすモデルは同じ?
考え方と答えを確かめる
同じではありません。一定量と一定割合の違いが、回数を重ねると結果へ表れます。
理由まで言えたら、下の代表3問へ進みましょう。
CHECK YOUR UNDERSTANDING
代表3問で、確かめよう。
アプリ収録の問題から3問を選定。章内のすべての項目を出題するものではありません。解答・解説はこのページで確認できます。
解答・解説だけ読む
問1:B
モデルは対象の特性によって「静的モデル」と「動的モデル」に分類されます。静的モデルは建築図面のように時間的要素を含まないものであり、動的モデルはレジの待ち行列や気象予測、生物の成長など、時間の経過に伴い状態が変化する事象を指します。建築図面やプラスチックモデルが時間変化を表すという記述は、静的モデルの説明として誤りです。静的モデルを不規則な現象とする記述は確率モデルの説明であり、動的モデルを方程式で表されるものとする記述も、動的/静的(時間の有無)と確定/確率(不規則性の有無)という異なる分類基準を混同しています。
問2:B
複利計算の数式モデルは「次期の金額=現在の金額+現在の金額×利率」であり、利息が元金に組み入れられるため、回を追うごとに利息が発生する元本が大きくなります。利率を2倍(5%から10%)にした場合、単利であれば増加分は2倍ですが、複利では増えた利息に対しても高い利率が適用されるため、10年後の増加分(利息合計)は5%時の2倍を超えます。なお、預金合計額の推移は利率によらず、最初から「一定の割合で増える」指数関数的な曲線(ロジスティック曲線とは異なる)を描きます。
問3:A
個体数は「環境収容力」という上限値に収束します。増加率(パラメータ)を変更すると「繁殖の速度(S字の傾き)」は変わりますが、最終的な上限値である「環境収容力」そのものは環境側の制約(広さや食料など)で決まるため、増加率を変えても上限値は変化しません。結果の読み取りにおいては、どの変数が「速度」に影響し、どの変数が「限界値」を決めているかを区別することが重要です。
理解できたら、別の問題でも。
この章の考え方を、条件の違う問題でも確かめましょう。情報1アプリでは分野別の演習と間違えた問題の復習ができます。
無料でアプリを入手 iPhone・iPadはApp Store、AndroidはGoogle Playへ。PCではストアを選べます。運営者が開発するアプリです。各OSの機能と利用条件はストア掲載をご確認ください。説明できたら、この章は完了。
- 「目的に必要な特徴を残す」の意味と理由を、具体例で説明できる
- 「条件を変えて比較する」の意味と理由を、具体例で説明できる
- 「結果と前提を一緒に読む」の意味と理由を、具体例で説明できる
迷った項目は本文・図解・例題へ戻り、答えを見ずに説明し直してみましょう。
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