この章の学習目標
読み終えたら、できること。
- 「手段を目的にしない」の意味と理由を、具体例で説明できる
- 「条件と関係者を調べる」の意味と理由を、具体例で説明できる
- 「結果から次の行動を決める」の意味と理由を、具体例で説明できる
章内を一度に読まず、見出しごとに例を説明してから先へ進んでも大丈夫です。
この章の目次
WHY / なぜ学ぶ?
身近な「なぜ?」から。
文化祭の受付が混んでいます。すぐ受付アプリを作れば解決するでしょうか。混雑の原因が入口の分かりにくさなら、案内の改善が有効かもしれません。問題と手段を分けて考えることが、情報を使った問題解決の出発点です。
BIG PICTURE
この章の全体像をつかもう。
理想と現状の隔たりを見つけ、原因と条件を調べ、複数の案を比べて試します。結果を評価して必要な変更を加える、という循環です。計画を守ること自体より、利用者の困りごとが減ったかを確認します。
アプリ教材の単元原図
まず、図で全体像をつかもう。
図の見出しと、下の本文の見出しを対応させて読みましょう。原図には発展事項も含まれます。この章の確認範囲は本文と代表3問です。
アプリ教材の制作原図を加工せず掲載しています。図の文字コードの固定バイト数などは例で、方式により異なります。本文の条件と併せて確認しましょう。本文は2026年10月に整理したWeb用解説です。
THREE KEYS
まず押さえるのは、3つ。
章の細かい用語は、この3つの考え方に結び付けて読み進めましょう。
手段を目的にしない
アプリや端末は解決の手段です。何を改善するかが不明なまま作ると、動いても問題が残る場合があります。
たとえば:「アプリを作る」でなく「待ち時間を短くする」を目標にします。
条件と関係者を調べる
費用や時間、使える機器だけでなく、利用する人・運用する人・影響を受ける人を考えます。
たとえば:来場者にスマートフォンがあることを当然の条件にしません。
結果から次の行動を決める
実行だけで終わらず、改善前後を同じ基準で比較します。失敗も原因を特定する材料になります。
たとえば:平均待ち時間が短くても、特定の人だけ長く待っていないか確認します。
THINK WITH A DIAGRAM
図を読みながら、考え方を追う。
| 段階 | 行うこと | 受付の例 |
|---|---|---|
| 計画 | 目標・条件を決める | 4分以下を目指す |
| 評価 | 結果を調べる | 実測は平均6分 |
| 改善 | 次の変更を決める | 案内表示を入口へ移す |
表が収まらない場合は横にスクロールできます。
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問題と課題の違い
問題は、理想の姿と現状との隔たりや、解消が必要な状況です。課題は、その隔たりを埋めるために取り組むこととして整理できます。「待ち時間が長い」が問題なら、「受付方法を見直す」が課題の一例です。最初から解決策を1つに決めず、誰にとって何が困るのかを具体化します。
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問題解決の基本手順
問題の発見→情報の収集・分析→解決案の検討→実行→評価・改善を行き来します。原因を調べずに機器を買い替えても解決するとは限りません。利用者の状況を調べ、試作品を使ってもらい、評価をもとに改善する人間中心設計も有効です。途中で新しい事実が分かれば、前の段階に戻ってかまいません。
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目的・条件・制約の整理
目的は「何を実現したいか」、条件は「満たす必要があること」、制約は「使える時間・費用などの限界」です。文化祭の受付なら、目的を「混雑を減らす」、条件を「来場人数を記録する」、制約を「端末は2台」と分けられます。手段である「アプリを作る」だけを目的にしないことが大切です。
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ステークホルダーの整理
ステークホルダーは、取り組みに関係する人や組織です。受付係だけでなく、来場者、車いす利用者、教員、会場管理者にも目を向けます。便利さと個人情報保護など、希望が両立しにくい場面もあります。誰の負担が増えるかを書き出すと、見落としていた条件が見つかります。
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PDCAの考え方
PDCAはPlan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の循環です。目標値と測り方を計画時に決め、実行後に結果を比較します。「使ってもらった」で終わらず、待ち時間や誤入力がどう変わったかを確かめます。評価は結果を調べること、改善は調べた結果を次の変更に反映することです。
重要語句を整理しよう。
| 語句 | 意味 | 混同しやすい点 |
|---|---|---|
| 問題 | 理想と現状の隔たりや解消が必要な状況。 | 解決策そのものではない。 |
| 課題 | 問題を解消するために取り組むこと。 | 目的から具体化する。 |
| 制約 | 時間・費用など利用できる条件の限界。 | 実行可能性の判断に関係する。 |
| ステークホルダー | 取り組みに関係・影響する人や組織。 | 直接使う人だけに限らない。 |
| プロトタイプ | 検討や評価のために作る試作品。 | 最初から完成品にしなくてよい。 |
| PDCA | 計画・実行・評価・改善の循環。 | CheckとActを分ける。 |
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WORKED EXAMPLE
一緒に解く:手順と理由を確かめよう。
図書室の返却ミスを減らすため、返却箱に色別の表示を付けました。次に何を確認しますか。
- 改善前にどの程度ミスがあったか確認します。
- 同じ期間や対象で、改善後のミス件数も数えます。
- 利用者が表示の意味を理解できたかも調べます。
- 減らなければ、色以外の文字や配置などを見直します。
| 記録 | 数値例 | 比較条件 |
|---|---|---|
| 改善前 | 30回中6回の誤返却 | 同じ種類の利用 |
| 改善後 | 30回中2回の誤返却 | 期間・人数も確認 |
| 次の行動 | 原因と使いやすさを確認 | 1つの数字で断定しない |
表が収まらない場合は横にスクロールできます。
表示を付けた事実ではなく、問題が減ったかを評価します。
ここで間違えやすい。
TRY IT YOURSELF
次は、自分の言葉で。
実測した待ち時間を目標値と比べるのは、PDCAのどこ?
考え方と答えを確かめる
Checkです。その結果をもとに受付方法を変更する段階がActです。
理由まで言えたら、下の代表3問へ進みましょう。
CHECK YOUR UNDERSTANDING
代表3問で、確かめよう。
アプリ収録の問題から3問を選定。章内のすべての項目を出題するものではありません。解答・解説はこのページで確認できます。
解答・解説だけ読む
問1:D
「人間中心設計(HCD)」は、利用者のニーズを把握したうえでデザインを行い、試作(プロトタイプ)を評価してもらい、その結果をもとに改善する、というサイクルを繰り返す手法です。プロトタイプは完成品の原型ではなく検討過程で作るものなので、簡単に作れるものを数多く試して可能性を探ることが推奨されます。
問2:B
問題とは「あるべき理想の姿と現実とのギャップ」や「解決や解消を必要とする状況」を指すと定義されています。指定された機能を持つプログラムを完成させることや、手段があらかじめ明示されている状態のように、ゴールや手段が既に決まっているものは「課題」と呼ばれることがあり、自ら理想の姿を設定し、そこに到達する手段を検討しなければならない状況こそが、情報科における「問題」の本質です。単なる調査に留まらず、理想に近づくための主体的な判断を伴う行動が求められます。
問3:C
PDCA サイクルの Check は、実行(Do)した結果を当初のゴール(理想の姿)と照らし合わせて評価する段階です。どこまで達成できたか、どの部分を改善すれば効果が大きいかを論理的に考え、次の Act(改善)へつなげます。ブレーンストーミングによる案出しと実行計画の立案は Plan、プログラムの作成やアンケートの配布は Do にあたります。各活動がどの段階に属するかを整理して覚えましょう。
理解できたら、別の問題でも。
この章の考え方を、条件の違う問題でも確かめましょう。情報1アプリでは分野別の演習と間違えた問題の復習ができます。
無料でアプリを入手 iPhone・iPadはApp Store、AndroidはGoogle Playへ。PCではストアを選べます。運営者が開発するアプリです。各OSの機能と利用条件はストア掲載をご確認ください。説明できたら、この章は完了。
- 「手段を目的にしない」の意味と理由を、具体例で説明できる
- 「条件と関係者を調べる」の意味と理由を、具体例で説明できる
- 「結果から次の行動を決める」の意味と理由を、具体例で説明できる
迷った項目は本文・図解・例題へ戻り、答えを見ずに説明し直してみましょう。
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本サイトの26章は、アプリの分類を用いた補助教材です。検定教科書や公式の章立てではありません。問題と図解は運営者のアプリ教材から選定し、問題ID・選択肢・正答を保持しています。共通テスト過去問の転載ではありません。